心に染み入る素敵な絵本

私の好きな本はあまんきみこ先生著の『きつねのおきゃくさま』という絵本です。
小学生の頃国語の教科書に掲載されており、以降ずっと大好きな作品です。
子供っぽいと思われるかもしれませんが、内容はとても温かく、切ないお話です。

お腹を空かせたきつねが痩せ細ったヒヨコと出会い、太らせてから食べるという目的で養ってあげます。
最初は警戒していたヒヨコでしたが、お腹いっぱい食べさせてくれる優しいきつねを『優しいお兄ちゃん』と言って慕い始めます。
その後ウサギやアヒルとも出会い、彼らもやせ細っていたので食べるつもりで養いますが、やっぱり慕ってくれるようになり、他者から「優しい」なんて褒められたことのなかった狐の心に変化が……。
その後別の山からお腹を空かせたオオカミが下りてきて、きつねが養っていた三匹の動物が狙われます。それをきつねは、命がけで守って戦うのです。

教科書で読んだ時には、悪い奴だったきつねがカッコいいヒーローになるという印象で、それはそれで凄く好きでした。
けれど大人になった今読んでみると、誰かに「優しい」なんて褒められたことのなかったようなきつねの心の変化に切なさを感じます。
今までどれだけ一人ぼっちだったのでしょう。目的はともかく幼い動物たちの面倒を見て、彼らはきつねを頼もしいお兄ちゃんだと慕っていましたが、支えられていたのはきつねの方だったように感じます。

教科書に載っていた程なので、情操教育にも良いのではないでしょうか。特に小さなお子様のいる家庭には、是非とも1冊置いてもらいたいくらいです。
人生の中で一度は触れてほしい素敵な絵本だと思います。